アイススラリーって知ってる? 喉越しヒンヤリ&身体の中から冷やせる最強ドリンクで熱中症対策

ツール・ド・フランスでも取り入れられている「アイススラリー」を知っていますか?

毎年暑さが厳しくなる夏場のサイクリングにおいて、熱中症対策は必須項目。効率的に身体を冷やすためには、身体の外側と内側の両方から冷やすことが大事です。

ただこの「身体を内側から冷やす」のがなかなか難しい……。そこでおすすめなのが「飲める氷」こと、アイススラリーです。

効果や作り方、サイクリングにおける活用方法まで、実際にアイススラリーを作って試してきました!

過酷な暑さ=夏場サイクリングの大敵

こんにちは、神楽坂つむり(つむりの悠々自適ライフ)です。

サイクリングする人であれば誰しもが体感していると思いますが……

過酷な暑さはサイクリングの大敵!

最高気温が35度を超えることも珍しくない近年の夏。ときには体温を超えるような暑さの中でのサイクリングは、端的にいってツライです。

運動していなくても暑いのですから、サイクリングのような長時間スポーツにおいてはその影響は無視できません。

実際に私も夏場と冬場を比べた場合、明らかに冬場の方が長時間のサイクリングでも疲れが溜まりにくいです。

水分不足や筋肉の疲労、塩分やミネラルの不足……。しっかりと対処しなければ、サイクリングに必要ないろんなものが不足し、パフォーマンスがガクンと低下してしまいます。

また、熱中症のリスクも高まりますので、サイクリングを安全に楽しむためにも暑さ対策はもはや必須と言えるでしょう。

サイクリングを安全に楽しむための暑さ対策とは?

暑さ対策はいくつか挙げることができます。

  • クーリング(身体を外から冷やす)
  • 涼しい時間帯(早朝、夕方)にサイクリングする
  • 日陰の多い場所を走る
  • 気温の低い場所を走る(避暑地や標高の高い場所など)
  • サイクリング中に無理をしない(頑張り過ぎない)
  • 十分な睡眠と食事を摂る

そして今回紹介するアイススラリーは

  • クーリング(身体を内から冷やす)

に該当します。

深部体温を下げる重要性

近年は暑さ対策において、「身体を内側から冷やす」ことの重要性が高まってきています。

従来は「身体を外側から冷やす」ことが主流でしたが、より効率的に身体を冷やすためにはどちらもとっても大切。

内側から冷やすとはつまり、「深部体温」を下げるということ。

深部体温は臓器や脳など、身体の内部の温度のこと。本来、深部体温は身体の機能を守るために一定の温度が保たれていますが、酷暑環境、高温多湿の状況下では深部体温が上昇してしまう場合があります。

深部体温は一度上昇してしまうと、水を被ったり涼しい室内に移動してもすぐに熱を逃すことができずに熱中症のリスクが高まってしまいます。

そこでおすすめなのが「アイススラリー」というわけです。

アイススラリーはさまざまなスポーツで広がりつつある冷却方法の一つ。自転車でいうと、あのツール・ド・フランスでも取り入れられているそうです。

酷暑の中を走るサイクリストに是非おすすめしたい熱中症対策です!

アイススラリーとは?

アイススラリーは「ice(氷)」と「slurry(ドロッとした混合液)」から作られた造語です。

アイススラリーとは、細かく砕いた氷と液体がシャーベット状に混ざった氷飲料のこと。イメージとしては溶けかけたカキ氷を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。

実際に飲用してみた印象としては「飲むことができる氷」と感じました。液体の割合も多いため、シャーベットやスムージーと違って、液体を飲みながら細かい氷も味わえるといったイメージです。

効率的に深部体温を下げるアイススラリー

アイススラリーは「細かい粒子の流動性のある氷」であることが注目すべき点。

アイススラリーは低温で流動性が高く、氷が水に溶ける際に体内の熱を多く吸収することができます。そのため、アイススラリーの摂取は冷たい飲料の摂取よりも非常に高い冷却効果を有しており、有用な暑熱対策の一つです。

競技者のための暑熱対策ガイドブック(国立スポーツ科学センター)より

フローズンやスムージーとは異なり、細かい氷の粒子が液体に分散した状態なので流動性が高く、水分補給と身体冷却を同時にできるメリットがあります。

さらに氷は溶ける際に周りの熱を吸収する効果があり、その氷は表面積が大きいほど、より効率的に溶ける=熱を吸収してくれます。アイススラリーは細かく砕いた氷であるため、同じ重さの氷よりも吸熱面積が大きく、身体の内部を効率的に冷やしてくれるというわけです。

簡単にいえば、ただ単に水を飲んだりアイスを食べるよりも、すばやく効率的に深部体温を下げられる、ということです。

とくにおすすめなのが「予冷(プレクーリング)」としてのアイススラリーの活用です。運動中はもちろん、運動前にあらかじめ飲んでおくと、深部体温上昇の予防に効果があるのだそうです。

Point!

  • 運動前に飲んで「予冷」する
  • 休憩時にこまめに摂取するのがおすすめ
  • 一度に大量に飲むのはNG(胃腸に過度な負担がかかります)
  • アイススラリーの作り方(ミキサーあり/なしバージョン)

    アイススラリーは自宅で簡単に作ることができます。

    【準備するもの】

    • スポーツドリンク
    • ミキサー(※)
    • 魔法瓶や保冷ボトル等、作ったアイススラリーを入れるもの

    【手順】

    1. スポーツドリンクと氷をミキサーにかける(※)
    2. 魔法瓶やボトルに注ぐ

    (※)「スポーツドリンク:氷」の割合は?
    スポーツドリンク:氷=3:2を基準として、スポーツドリンクの糖度・濃さに応じて調整するのがおすすめです。


    以上、とっても簡単です!

    スポーツドリンクを凍らせて、スポーツドリンクだけで作ることも。甘いのが苦手な人は氷をチョイスしよう Photo: FRAME
    ミキサーにかけると氷はなめらかになる Photo: FRAME

    ▼今回使ったミキサー

    私はミキサーを持っていないため、ミキサーがなくても作れる方法で作ってみました。

    【準備するもの】

    • スポーツドリンク
    • フリーザーバッグ
    • 氷を砕くための棒など

    【ミキサーがない場合の手順】

    1. フリーザーバッグにスポーツドリンクと水(※)を注いで凍らせる
    2. 凍らせた状態のものを棒などで細かく砕く
    3. 水を適量注ぐ
    4. 魔法瓶やボトルに注ぐ

    (※)「スポーツドリンク:水」の割合は?
    スポーツドリンク:水=5:5を基準として、スポーツドリンクの糖度・濃さに応じて調整するのがおすすめです。

    まずはフリーザーバッグにスポーツドリンクと水を注ぎます。500mlのペットボトルを全て注ぎ、同じ量の水を追加で注ぎました。

    しっかりと密閉したらあとは冷凍庫で凍らせるだけ。

    実際に凍るまでの時間を測定してみると、おおよそ4時間程度で凍ることが分かりました。砕く前提ですし、多少液体混じりでも問題なさそうです。

    おそらくスポーツドリンクの種類や冷凍庫の状態でも時間は変化しますので、いろいろと試してみるのがよさそう。

    また市販のフリーザーバッグを購入する場合は、サイズはLサイズをおすすめします。スポーツドリンクが500mlと想定して水も同じくらい入れるとなると、容量は1,000ml。そこそこかさばるので冷凍庫内のスペースにも気をつけましょう。

    凍らせたもの。4時間のつもりがアニメを見ているうちに5時間経過していました。思ったよりしっかりと固まっていていい感じです

    袋の上からめん棒で氷を砕いていきます

    棒でペチペチと叩いて氷を細かくしていきます。もっと硬いと思いきや、意外とあっさりとくしゃくしゃに崩れていってくれます。

    3分も経たないうちに指で触っても固まった氷の感触はなくなり、ぎゅむぎゅむと明らかに氷が細かくなったことが分かりました。

    より流動性をもたせたい場合は水やスポーツドリンクを足してもOK

    これでアイススラリーの完成です! 思ったよりもずっと簡単に作ることが出来ました。

    ライドで実感!

    先述のとおり、アイススラリーを飲用するおすすめタイミングは「運動前」。夏場のサイクリングに臨む際は、あらかじめアイススラリーを飲んでおくことで深部体温の上昇を予防することが可能です。結果として体調不良や熱中症のリスクを抑えることができます。

    が! サイクリングは長時間スポーツ。いくら予防していても運動しているうちに体温が上昇することは免れません。また、体感的にもやはり冷たい飲み物を飲みたい!

    ということでアイススラリーを持参してサイクリングしてみました。

    いくら冷え冷えのアイススラリーとは言え、炎天下にノーガードで持参すれば一瞬で溶けて台無しになってしまうので、おすすめの持ち運び方法は魔法瓶です。

    保冷ボトルなどもありますが、飲み口がそもそも液体にしか対応しておらず、肝心の細かく砕かれた氷を口にできないためおすすめできません。ボトルの蓋を外して飲む方法もありますが、やはり保冷性能は魔法瓶にはとおく及ばず……ということで断念しました。

    魔法瓶も近年ではアウトドア用の軽量コンパクトモデルが増えています。アイススラリーはもちろん、冬場のサイクリングで暖かいコーヒーを持ち運ぶ際などにも便利なので一本買っておくと何かと便利です!

    ▼スポーツドリンクもOK!

    その日の天気予報は最高気温が35度を超える炎天下。アイススラリーの効果をしっかり確かめるべく、100kmほどサイクリングしてきました。

    セオリー通り、まずは出発前にアイススラリーを一口。

    冷えた水を飲む、凍らせた氷を砕いて食べるより、明らかに喉越しの時点で「つめたっ!!」と感じることができます。

    おなかがゆるい人は一気に飲み過ぎると内臓にダメージを与えてしまうので、少しずつちょびちょび飲むのがおすすめ。

    サイクリング中の基本の水分補給は通常のボトルからの給水にしました。アイススラリーは魔法瓶に入れているため、走りながらの補給は不向き。休憩中に降車して補給することとします。

    夏場サイクリングのポイントは休憩の頻度とタイミング。体温が上がり切る前に勇気ある休憩をこまめに取るのがとても大切です。

    すべての休憩タイミングで、すかさずアイススラリーをちょびちょびと飲んでみました。

    これが美味しいのなんの!

    キンキンに冷えてやがる…っ!」状態です。もうこれだけで気分もリフレッシュできます。まさにカキ氷を食べた時のあの感覚に近いですが、カキ氷よりも身体の内部が深く冷える感覚です。

    また実際に体温が低下するのも感じられます。口にして喉を通った瞬間に、冷たいものが体内に入っていくのが感じられました。その後しばらくすると身体の熱が和らぐような感覚。氷点下状態のものが体内を通過するのですから当然と言えば当然ですが、やはり効果は抜群!

    また、コンビニでアイスを買って食べるよりもはるかに効率的。パッと停まって好きなタイミングで補給できるのも強みです。

    魔法瓶を持ち運ぶとなるとボトルケージを一つ犠牲にするか、サコッシュやフレームバッグなどを用意する必要がありますが、その手間&コストを差し引いても余りあるメリットがある!と感じました。

    市販品を活用するのもアリ!

    最近ではスーパーや薬局などにも熱中症対策としてアイススラリー商品が棚に並ぶようになってきました。

    私が訪れたスーパーでは凍った状態ではなく常温販売だったので、購入してから自宅の冷凍庫に入れておき、ライド当日朝に冷凍庫から取り出して自然解凍させてから飲用しました。

    出先でパッと飲みたい!という時には少々不便ですが、先述したように深部体温を冷やす方法を理解していれば市販品もじょうずに取り入れることができそうです。

    アイススラリーは夏場サイクリングの新定番

    Photo: FRAME

    アイススラリーは水や氷よりも効率的に体温を下げられることが分かりました。

    年々暑さを増している日本の夏ですが、熱中症のリスクなどはなるべく下げたいもの。楽しく安全にサイクリングを楽しむために、是非今年の夏からアイススラリーを試してみてください。

    Photos © 神楽坂つむり


    監修:本田母映(ほんだもえ)

    本田母映(ほんだもえ)

    新潟県在住のサイクリスト/医師。救急救命士の夫と運営するブログ「メディカルサイクリスト」では、医学的知識を活かした情報発信をおこなっている。

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    WRITTEN BY神楽坂つむり

    ブログ「つむりの悠々自適ライフ」の管理人 大学時代に自転車と出会い、暇があれば各地をツーリングする日々。 最近では海外旅にも挑戦中。機材ネタや旅のノウハウ、旅レポートを執筆中。 http://tsumuri5.com/

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